STOMACH胃の病気

About胃の病気について

  • 機能性ディスペプシア

    機能性ディスペプシアという言葉を聞いたことがあるでしょうか。おそらく聞き慣れない(聞いたことがない)病名だと思います。まずは「機能性」という言葉ですが、対義語が「器質性:物理的に何か病気があること」となるので「機能性」は「物理的に何か病気がないこと」を指します。

    つぎに「ディスペプシア」ですが、適切な日本語訳がなくカタカナ表記となっています。dyspepsiaとはdys(bad:悪い)-pepsis(digestion:消化)というギリシャ語からきており、現在では「痛みやもたれ感などのみぞおちを中心とした症状」を表すこととなっています。結局「機能性ディスペプシア」とは「器質的(物理的)異常がないのにみぞおちのあたりが不快な状態」ということになります。

    病気としては大きくふたつにわけられており、①食事と関連するもの(食後愁訴症候群PDS:postprandial distress syndrome)と②食事と関連しないみぞおちの痛み(心窩部痛症候群EPS:epigastric pain syndrome)に分類されます。聞いたことがないにも関わらず、この病気にあてはまる人は10人に1人程度いるとされています。内視鏡などで異常がないにも関わらず症状がつづくことがあり、胃の運動異常やストレス、運動やピロリ菌感染が関連しているとされています。

    治療の第一段階は生活習慣(睡眠や食事のリズム、運動不足、喫煙)や食事習慣(食物線維不足、高カロリー脂肪食、グルテン含むFODMAP食)の改善を行います。生活・食事習慣の改善で効果が乏しい方は内服を調整しながら症状の改善を目指していきます。いくつかの薬が有効であることがわかっており、その人に合うものを時間をかけてみつけていくことが大事です。

    今までに、検査で特に異常をいわれないのに症状がつづく人は機能性ディスペプシアの可能性がありますので気軽にご相談ください。

  • 胃炎・胃/十二指腸潰瘍

    胃炎とは文字通り「胃に炎症がおきている状態」です。もともと胃内は胃酸(塩酸)が充満しており、胃の内部は胃酸からまもられる構造をしています。つまり胃の中には攻撃因子(胃酸など)と防御因子(粘液やプロスタグランジン)があり、双方のバランスがこわれることで炎症がおきます。炎症が粘膜の表面でおさまっているときは「胃炎」、粘膜表面より深く進んだ場合に「びらん」や「潰瘍」となります。

    胃炎でも症状がでることがありますが、潰瘍になるとみぞおちの痛みや不快感、食欲の減退を感じることがあります。原因としてはストレスや生活習慣の乱れ、ピロリ菌感染症などがわかっています。(ピロリ菌感染については「ヘリコバクターピロリ感染症(リンク)」で説明しています)

    治療はストレスの軽減や生活習慣の改善が必須となりますが、必要に応じて制酸剤(ヒスタミン拮抗薬やPPI/P-CAB)を服用することで治癒を促進することができます。ピロリ菌がいる場合には、胃炎/胃潰瘍の治療ならびに、今後の予防としても優先して除菌治療をおこなうことがあります。
    みぞおちの痛みや不快感、食欲の減退がある方は気軽にご相談ください。

  • ヘリコバクター・ピロリ感染症

    ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter Pylori)は人ならびにサルやネコなどの胃内にも感染する菌で、単に「ピロリ菌」と呼ばれることがあります。おもに汚染された水・食料などが口に入ってきた際に感染しますが、ほとんどが小児期(5才くらいまで)に感染するといわれています。感染しているだけでは特に症状は出ませんが、胃の粘膜上では炎症が発生し、長い時間をかけて慢性胃炎を形成していきます。慢性胃炎をおこすと、そこから胃潰瘍や胃がんが発生します。それ以外にもリンパ腫や機能性ディスペプシア(リンク)、血小板減少性紫斑病などとの関連が指摘されています。ピロリ菌の治療(除菌治療といいます)を行うことによりこれらの病気を治療・予防できることがわかっており、感染が判明した場合は除菌治療が検討されます。

    治療は抗生剤を含む内服の組み合わせ(朝夕計14錠)を一週間服用することですが、高い治療効果(およそ9割)が期待されます。一回目の治療で除菌できなかった場合は抗生剤の種類を変えて二回目の除菌を行います。抗生剤が含まれているのでアレルギー(皮疹)が出たり胃腸の調子が悪くなることもありますので副作用が強い場合には服用を中止してご連絡ください。

    一度ピロリ菌除菌を成功したあとで再度感染する可能性はごくわずかといわれているので、一度除菌した後に再度ピロリ菌の検査をする必要はありません。万が一再陽性が疑われる場合には検査を追加することがあります。除菌後は胃がんのリスクを低下させることができますが、完全に予防できるわけではないので定期的な胃カメラのフォローが必要です。

    また、ピロリ菌の検査や治療を保険診療でおこなうためには胃カメラでの検査(胃がんがないかどうかのチェック)が必須とされています。ピロリ菌の感染が判明した方や感染有無のチェックをご希望される方は気軽にご相談ください。

  • 胃がん

    胃がんは100人/10万人程度でおきる病気であり(全国がん登録罹患データ2018より)、野田市の規模で考えると毎年150人程度診断される病気です。男性に多い傾向(女性の2倍)で、ほとんどがピロリ菌に感染している、または以前感染していた方に発生します。塩気の多い食べ物や喫煙もリスク因子としてわかっています。初期段階では症状が出ることはなく、進行した状態ではじめて体重減少や食事が摂れないなどの症状が出現します。初期の病変であれば内視鏡治療が可能ですが、進行すれば外科治療や化学療法が必要になります。

    早期発見早期治療が原則であり、ピロリ菌に感染している、または以前感染していた方は定期的な内視鏡検査によるスクリーニング検査が必要です。胃がん検査やピロリ菌検査を希望される方は気軽にご相談ください。

  • 胃ポリープ

    「ポリープ」というのは正確には病名ではなく『皮膚・粘膜などの面から突出し、茎をもつ卵球状の腫瘤(広辞苑第6版より)』の総称です。(消化器内視鏡学会HPより)胃にできるポリープはおおきく2つあり、「胃底腺ポリープ」と「胃過形成性ポリープ」です。

    ピロリ菌の感染有無で発育原因がことなりますが、いずれも良性のものでがん化することは稀です。急速に大きくなっているときや出血などで貧血がすすんでしまうときは切除が必要になることもあります。バリウム検査などで胃のポリープを指摘されたときは内視鏡検査によってその性状を確認する必要がありますので気軽にご相談ください。