ALLERGEN IMMUNOTHERAPYアレルゲン免疫療法
アレルゲン免疫療法
アレルギー症状でお困りの方へ
アレルギー反応による鼻炎、目のかゆみにお悩みの方は多いのではないでしょうか?アレルギーとは何らかの物質(抗原)に対しからだの免疫が過剰に反応している状態をいいます。くしゃみ、鼻水、鼻閉の症状をきたすものを「アレルギー性鼻炎」、目のかゆみをきたすものを「アレルギー性結膜炎」といいます。原因物質(抗原)により季節性のものと通年性(1年をとおしておこる)のものにわかれますが、季節性の「花粉症」が有名なところだとおもいます。
アレルギー症状の治療
花粉症の方はよくご存じだと思いますが、症状のひどい季節には抗ヒスタミン薬の内服をおこないます。これはアレルギー症状の原因となる物質がヒスタミンであり、このヒスタミンをおさえるのが抗ヒスタミン薬となります。
あまり知られていないことですが、抗ヒスタミン薬は症状が出てからのみはじめても効果があまり発揮されません。これはこの薬の特性でもあるのですが、ヒスタミンという物質が作用する部分(受容体)に薬が結合することによってはじめて効果が得られます。この受容体に先にヒスタミンが結合してしまっている場合は、抗ヒスタミン薬は受容体に結合できず効果を出すことができません。
そのため抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を使用するときは、
・夜寝る前
・起床後すぐ
に服用して、外出前に体の中に十分とどけてあげるとより効果が高まります。
舌下免疫療法(SLIT)とは
上記の抗ヒスタミン薬が症状に対する治療(対症療法)であったのに対し、原因に対して治療をおこなっていくのが減感作療法(げんかんさりょうほう)です。これはもともと過剰に反応している免疫反応自体をおさえるという目的でおこないます。
具体的には、原因となる物質(抗原)を体に少量ずつ投与し、免疫反応が過剰に反応することをおさえます。今は敵だと思っている抗原を、毎日出会うことによって仲間かも?と認識させるということです。
減感作療法をおこなうには抗原を体内に投与する必要がありますが、それには
・注射による投与(皮下注射)
・内服による投与(舌下投与)
の2通りがあります。
経口摂取をおこなうもの(内服でできるもの)を舌下免疫療法(SubLingual ImmunoTherapy : SLIT)といいます。
何が治療できる?
前述の通り舌下免疫療法は、「毎日舌下に抗原を少量投与することにより免疫反応の低減を意図する治療」ですが、すべての抗原が治療対象となるわけではなく、治療できる原因抗原は現時点(2022/5現在)で、
・スギ花粉(いわゆる花粉症)
・ダニ(通年性アレルギー)
の2種類のみです。
もし上記のアレルギーでお困りの方は舌下免疫療法が適応となる可能性があります。
実際の治療
問診・診断
まずは問診やアレルギー検査によって何が原因でアレルギー症状がおこっているのかを確認します。アレルギー検査にはいくつかの方法がありますが、当院では血液による特異的IgE測定により診断します。
治療可能かどうかの判断
次の項で提示しますが治療開始・継続にはいくつかの注意事項があります。そこが問題ないと判断した場合のみ治療開始となります。
初回投与
もともとアレルギーをおこす物質を投与するため、初回は少量からおこないますが、それでも強いアレルギー反応(アナフィラキシーなど)をおこす方もいますので、初回投与はクリニック内でおこないます。
正しい内服方法を指導するとともに、アレルギー症状がでないかをしっかりと確認するために、30分は院内ですごしていただきます。
アレルギー反応が出ないことを確認した場合は翌日以降は自宅での服用となります。
継続治療
初回投与での強いアレルギー反応がおきなかったとしても、はじめの1ヶ月程度は口の中の局所反応(投与部分の赤み、腫れ)がおこることがあり、慎重に治療継続可能かみていきます。
治療は基本的に長期戦で3~5年程度の治療継続が必要となります。
注意事項
この治療はうまくいけばアレルギー症状の緩和につなげることができ、とても魅力的にかんじられますがいくつかの注意事項があります。
1. 根気強く治療を継続していくこと
3~5年間、毎日欠かさず服用し、1ヶ月程度での定期的な受診が必要となります。
体調がわるいとき(風邪をひいたり、喘息発作がおきたり、口の中があれたりしたとき)は中断する必要があります。妊娠中はヒスタミンの作用で子宮収縮を誘発することがあるので治療の中断が必要になります。
以上のことを守る必要があり、治療が継続できないと判断した場合にはやむなく途中で中断することもあることをご理解下さい。
2.すべての方に効果があるわけではないこと
夢の治療のようにかんじられますが、根気強くやったとしてもすべての方に治療効果がある治療ではないことをご理解下さい。
3.効果があって終了してもその後効果がよわまる可能性があること
3年以上継続した場合、内服を中止した後も効果が持続することがわかっていますが、これも人によっては効果がよわまってしまう可能性があることをご理解下さい。